クニツィア日本滞在 2013.03.22 - 03.27

KniziaSignature20130323.JPG3月22日から27日までの6日間、世界を代表するボードゲームデザイナーのライナー・クニツィアが初めて来日しました。東京・水道橋のメビウスゲームズが、23日のクニツィアフェア(サイン会)とメビウス20周年記念パーティーのために招待したのです。自分はスタッフとしてパーティーでの講演の通訳などのほか、京都旅行に同行したり、インタビューの通訳をさせてもらいました。(写真は、今回サインして頂いたゲームリンク4号の記事と古代ローマの新しいゲームのマニュアル)



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3月22日 金曜日 クニツィア、初来日!

11時半のルフトハンザ714便で成田に到着するクニツィアとマーガレットさんをメビウスおやじ(能勢さん)と自分が出迎えました。なかなか出てこないのが心配でしたが、メビウスへのお土産の壁時計が爆弾のような音を立てるので手間取ったんだよ、などとあとで冗談を言っていました。スカイライナーで上野へ、荷物も多いのでそこからはタクシーでホテルへと向かいます。タクシーは2人ずつ2台で分乗し、自分はマーガレットさんと一緒です。マーガレットさんは大学の学部時代からクニツィアを知っているとのことなので「彼は大学時代はどんなゲームを遊んでいたのでしょうか?」と訊くと「自分のゲームよ。あの人が自分のゲーム以外のゲームを遊んでいるのは見たことが無いわ」とのこと。これにはびっくりしました。それほど多くはゲームを遊ばないというマーガレットさんですが、クニツィアのゲームの中で一番好きゲームは「ヘックメック」だそうです。なにはともあれ、タクシーはホテルへ無事到着です。さすがに長旅ということでゆっくり休んでもらいます。クニツィア、そしてマーガレットさん、日本へようこそ!



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3月23日 土曜日 クニツィア・フェアとメビウスゲームズ20周年パーティー

Baumkuchen.JPGクニツィア来日の一番の目的はこの日のパーティーです。11時から1時までクニツィア・フェア、そして3時から9時までが20周年パーティーというスケジュールです。朝、ホテルまで出迎えたときにクニツィアとマーガレットさんからドイツ土産のバームクーヘンを頂ました。以前バームクーヘンが好きだと喋ったのを覚えていてくれたのです。クニツィアはバームクーヘンというものの存在をこれまで知らなかったそうで、ミュンヘンのお店で買ってきたんだと言います。確かにドイツでも売っているところは限られているので日本での方が知名度があるのかもしれません。

KniziaFair20130323-1.JPGクニツィア・フェアは、日本では初めてだと思われる海外ゲームデザイナーのサイン会で、メビウス店内で行われました。メビウスは21種類ものクニツィアのゲームを用意しており、そこで購入したゲームにサインがもらえるのです。日本語の名前をその場でローマ字で説明するのは大変なので、自分の名前を書いて欲しい人はあらかじめ紙に書いておくなどの工夫がされていました。予想以上に多くの人が来て入場制限もあり、窓から下を覗くと列ができていたので心配でしたが、来店した全員がクニツィアのサインをもらえたようで良かったです。前倒しで開始したうえに延長したので実質2時間半となりましたが、クニツィアは疲れも見せずに堂々としていました。

KniziaFair20130323-2.JPG

(ひとりひとりに丁寧にサインをするクニツィア)

MobiusParty20130323-1.JPG午後3時からはいよいよメビウスゲームズ20周年パーティーです。2部構成で、第1部はメビウスからの挨拶とクニツィアの略歴紹介のあと、いよいよクニツィアの講演となります。自分は逐次通訳を努めました。初めての経験だったので、うっかりメモと鉛筆を持っていくのを忘れてしまい、クニツィアが一区切り喋るまでを、ずっと記憶するというまるで「ロバの橋」というゲームのような状態になりました。そういったこともあり、かなり大雑把な訳になっている部分もありましたが、大筋は大丈夫だったと思います。個人的には「ラー」の制作過程での変遷などが非常に興味深かったです。そのあとは質疑応答で、あらかじめ集められた質問から抜粋してクニツィア本人に答えてもらいます。最後には「いくら稼いでいるのでしょうか?」という質問があり「十分じゃないね」などとクニツィアはまわりを笑わせていました。

(ユーストリームの講演ビデオ その1 その2

MobiusParty20130323-2.JPGゲーム体験会では、まだ未出版の「京都(仮題)」というゲームがプレイされました。シンプルなタイル配置のゲームで頭脳絶好調に似たテイストがあります。ルール説明はクニツィアがあらかじめ用意してくれたスライドで例を見せながらスムースに進みました。くじびきで当たった数人だけがラッキーなことにクニツィアと遊べたのですが、クニツィア本人は手加減無しで勝っていたというのはさすがです。なお、このゲームはメビウスから出版、発売される予定です。どんな風に製品化されるのか、今から楽しみです。

MobiusParty20130323-3.JPG第2部はテーブルを片付けて、立食パーティーとなります。能勢さん、草場さん、安田さん、小田さんの挨拶のあと、丸テーブルでの立食となりました。クニツィアはここでも多くのサインや写真を求められており、こちらは疲れているのではないかとかなり心配したのですが、始終笑顔で接してくれて素晴らしいです。クニツィアも自分もほとんど食べる時間がなくて大変でした。この日は実はマーガレットさんの誕生日でもあり、サプライズでケーキがプレゼントされました。とても喜んでもらえたようで、良かったです。

終わりには全体ゲームとして「ストリームス」と「マネージャガ」を全員で遊びました。最後の2マスが残った辺りではクニツィアはパーフェクトで、さすがだなあと見ていました。「マネージャガ」は「マネージャー」を元にした数字連鎖のゲームです。全員が1以上の任意の数字を1つ書きます。この数字がそのまま勝利点になるか、あるいは0点になるかは他のプレイヤー次第です。最小の数字は必ず得点になります。以降は小さな数字から順に宣言していき、その数字よりも差が10以内ならば得点です。しかしどこかで11以上のギャップがあるとそれ以上はすべて無得点なのです。100人いるので106という数字を書きましたが失敗でした。クニツィアは29辺りを書いていたと思います。3回勝負で、3回目には簡略化のためか30番台、40番台というようにやっていたのですが、これだと11以上のギャップがあるかが分からないことがあるのでは? と少しだけ疑問に思いました。

これで楽しかったパーティーも終わりです。自分はクニツィアとマーガレットさんをホテルまで送っていったあと、メビウスゲームズの能勢さん家族と夕食に行きました。疲れが相当たまっており、帰宅せずに付近のカプセルホテルに泊まりました。



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3月24日 日曜日 クニツィア伝統ゲーム会

TraditionalGames20130323.JPGクニツィア来日にあたって、何かできることはないかと色々な方に聞いてみたのですが、その中で実行されたのが草場さん主導の「クニツィアに伝統ゲームを教える」という集まりです。草場さんらの尽力により、一度は廃れていた伝統ゲームでよみがえったものが幾つかあります。それらのなかにはボードゲームギークにも登録されているものもありますが、日本でこういう機会にでもでないと遊ぶことはないだろうということで、秘書のカレンさんを通じて説得し、1時間だけ時間をもらえることになりました。実際に遊ぶのは「ごいた」のみにし、あとは遊ぶところを見てもらう「投扇興」と「藤八拳」、あとは用具だけ見てもらうゲームを幾つか用意しました。また、資料として日本地図にゲームの場所と解説を示したものを草場さんが用意してくれました。この地図が「サムライ」の日本地図なのが粋ですね。

前日の講演会では「伝統ゲームは既に評価が固まっているという強みがある」と言っていたクニツィアですが、草場さんは「今日紹介するゲームはそういう強みが全く無いゲームばかりです。」というくだりで説明を始めます。

Tosenkyo20130323.JPGまずアクションゲームの「投扇興」、そして「藤八拳」で興味を持ってもらい「ごいた」を一緒に遊んでもらうという流れだったのですが、やはりゲームを愛して止まないクニツィアだけあって「投扇興」と「藤八拳」も実際に遊んでくれました。「投扇興」ではマーガレットさんも加わり、2人ともきちんと正座して正式な投げ方で遊びました。「次こそ30点を出す」と何度も言いながら扇を投げていましたが、やはりなかなか当たりません。西洋のダーツとは違った雰囲気を楽しんで頂けたようです。

次は「藤八拳」です。じゃんけんに代表される拳のひとつですが、3つのポーズ(庄屋、キツネ、猟師)と強弱関係が一瞬にはなかなか分かりずらいものです。でもそこはさすがクニツィアです。あっという間に飲み込み、きちんとゲームをしていたのは驚きです。

Goita20130324.JPGそして真打ちとも言えるごいたです。あらかじめ「すごろくや」で購入して英語のシールを貼っておいたものを使いました。「ごいた」は近代ドイツゲームの匂いがする洗練されたキレのあるルールだと思いますが、クニツィアにもそれは感じ取ってもらえたようで「このシステムは見たことないね、初心者は初心者なりに、上級者は上級者なりに戦略が立てられるのが良いね」と言っていました。3回ほど遊んだあと、最後の1回は本物の木でできた伝統的なごいたの用具で遊びました。漢字なのでプレイアビリティーは劣るものの、伝統ゲームのマテリアルとしての良さを感じて欲しいという草場さんの意見です。結構混乱していたみたいで(まあ当たり前だと思いますが)ゲームとしてはちょっと成り立っていなかったかもしれませんが、本物で遊んだと言うのは貴重な経験かも知れません。

そのあとは日本のバックギャモンである盤双六を説明しましたが、バックギャモンとの違いを述べるたびに的確なコメントが戻ってくるのはやはりすごいです。その他の八八などは見せるだけに留まりました。次回は手本引きをやってみてもらいたいですね。

そしてクニツィア側からは彼自身のアブストラクトゲームの「ティク」が草場さんにプレゼントされました。シュテフェンシュピールの木製のゲームで「クリンチ」と言う名前で90年代にシュピールボックスで発表されたゲームです。

この伝統ゲーム会は、メールのやり取りではクニツィアはあまり乗り気でなかったので心配だったのですが、「想像していたよりもずっと面白かった」と最後に言われたのが良かったです。翌日もクニツィアの方からごいたの話をしてきたりと、この会は大成功だったと思います。



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3月25日 月曜日 京都旅行

この日は楽しみにしていた日帰り京都旅行です。メビウスの能勢夫妻、クニツィアとマーガレットさん、おのさん、自分の6人です。メビウスママが計画を練ってくれて、だいたいそれに沿って観光しました。クニツィアは以前から新幹線で京都に行くということに興味を持っていたようで、この旅行が実現したわけです。

Shinkansen20130325.JPG8時東京発の新幹線なので新横浜で合流しようと思っていたのですが、早朝に目が覚めてしまい、そのまま初電の次の列車で水道橋まで行ってしまいました。ホテルでメビウスおやじとクニツィア&マーガレットさんに合流、東京駅でメビウスママとおのさんに合流です。朝食はメビウスママの用意してくれたサンドイッチです。自分は朝食をたくさん食べる方なので、ちょっと少ないかなあと思って予備に駅弁を1つ買ってしまいました。ところがサンドイッチのあまりを皆から頂き、さらに食後にバームクーヘンまで食べてお腹いっぱいです。このバームクーヘンは、クニツィアとマーガレットさんが持って来たもので、自分が頂いたものと同じですが、ダークチョコレートではなくミルクチョコレートで覆われています。持参していたアーミーナイフを使って切り分けて、新幹線の中でみんなで少しずつ食べます。半分くらい平らげました。

KyotoStation20130325.jpg京都駅に着き、能勢さんがバスの一日券を買うあいだに京都駅の屋上を見学します。上まで伸びるエスカレーターがすごいのと、京都市内が一望できるので個人的にはおすすめのスポットです。それからバスで清水寺、二条城、金閣寺という順に廻ります。月曜だというのに混んでいて、バスもぎゅう詰めでした。清水寺のあと近くの奥丹(おくたん)で昼食の豆腐料理となりました。後日、京都で何が一番印象に残ったかと聞いたら、この昼食だったそうです。

StrongKnizia20130325.JPGクニツィアは意外と写真好きで、自分を入れた写真を色々な角度で撮ります。またこちらが写真を撮るときも色々とポーズをとってくれて、サービス精神も旺盛です。二条城では桜の下でポーズを作ってくれました。

Kinkakuji20130325.JPG帰りは、京都駅で買ったお弁当の手鞠寿司を食べ、それからバームクーヘンの残りをたいらげました。さらにドイツの素朴な味わいのクラッカーをクニツィアから頂きました。「これは一度に口の中に入れて、湿らせて柔らかくなってから食べると良いんだよ」などと言って、みんなにその食べ方を披露します。なるほど、このクラッカーを口に頬張っているとゲームのアイディアが浮かんでくるのかも知れません。あと印象に残っているのはクニツィアは頭痛が好きなんだという話です。最近は頭が痛くなると薬を飲むそうですが、子供の頃はそういった薬を殆ど飲まずに育ったので、自分には刺激が強いそうです。よってそのおかげで眠れなくなってゲームのことを色々と考えられるのが素晴らしいとのことです。東京駅に到着し、おのさんと一緒に中央線のプラットフォームまでクニツィアとマーガレットさんを見送ってこの日の旅行はおしまいです。



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3月26日 火曜日 暮しとボードゲームのインタビュー

この日は「暮しとボードゲーム」の河上さんのインタビューに同行して、通訳をしました。貴重なフリーの時間をインタビューに使って頂いてクニツィアには本当に感謝です。そのあと、クニツィアとマーガレットさんは浅草、スカイツリー、銀座などにショッピングと観光に行ったそうです。



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3月27日 水曜日 帰国

MemoPad.JPGいよいよ出発の日です。成田空港までの車中では魚市場の話になり、いつかは魚市場をテーマにしたオークションゲームを作ってみたいという話になりました。少しでも参考になればと、自分が以前撮った築地の早朝の競りの様子の動画や写真を一緒に見たりしているうちに成田に到着です。空港で搭乗手続きを済ませたあとは、最後のショッピングです。滞在中にずっと探していたインスペクターコッタというぬいぐるみに着せる和服が見つかって大満足のようでした。この日、自分は成田のあとに水曜日の会に寄ろうと思って、ゲームを入れた黒いクニツィアバッグを持参していたのですが、気が付くとそこにクニツィアゲームズのメモパッド(写真)が入っていました。嬉しいプレゼントです。こうしてルフトハンザで再びドイツ、そしてイギリスへと戻っていきました。今回の滞在を機に、日本でもクニツィアのゲームがもっと遊ばれると良いなと思います。再度の来日をいまから楽しみにしています。

Clock.JPG写真はクニツィアがメビウスゲームズにプレゼントした壁時計で、メビウス店内で見ることができます。30分おきに機械仕掛けで人形が廻って音楽が流れますので皆さんも見に行ってみてはどうでしょうか。

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