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テキスト バルーンカップの憂鬱  2003/08/06   トップ

バルーンカップ カバー写真    のっけから、ネガティブなタイトルですが最近発売されたバルーンカップに関して面白いやりとりが有ったのでまとめて見ました。まずバルーンカップはステフェン・グレンさんというアメリカの方がデザインし、Kosmos/RioGrande社が現在発売しています。バルーンカップは彼にとって商業的に発売されたゲームとしては初めての物です。このゲームは大変に良く出来た2人用のカードゲームで、発売前からかなり良い評判が聞かれました。クニツィアロストシティーと比較し、それにとって変わるゲームと評する人もいました。

   そして今年の5月ごろバルーンカップがやっと市場に出回り始めました。評判も概ね良好でしたが、最初の問題というか気になる点が浮上しました。このゲームの中では規定数ある色のキューブを獲得すると勝利条件の一つであるトロフィーを獲得できるのですが、トロフィーを獲得した後、その色のキューブは用無しになります。ルールにはその用無しになった同じ色のキューブを三つ、好きな色のキューブひとつと交換できると記載されています。何人かのプレーヤーがこのルールに違和感を感じ、ネット上で不満を漏らしました。まず”交換したキューブはどこから補充するのか?”とういう根本的な問題がありました。そして、キューブを交換することによって無理な状況からも形勢が逆転できるという不満も聞かれました。ステフェン・グレンさんはまず、このルールはKosmos社によって考え出されたと説明しました。Kosmos社ではプレーヤーがキューブを獲得しても使用済みのキューブは無駄で満足感を与えないという理由でこの救済措置とも言えるルールを追加したそうです。そして代わりのキューブをどこから補充するのかという問題ですが、ドイツ語版ルールには明記されていないそうなのですが、”想像の上(現物は無し)で補充したことにする。”という見解でした(これはRioGrandeの英語のルールには記載されています)。この変更についてステフェン・グレンさんはあまり気に入っていないと個人的にコメントしました。彼の中でバルーンカップは、あくまで2人用の軽いファミリーゲームとして開発したつもりで、あまり余計な競争要素を増やしたくないそうです。

   次の問題ですが、これは最初の問題よりさらに大きな物でした。それは”ロックアップ”という状態がおきたのです。ロックアップとは場合によってゲームが終了出来ない状態になってしまう現象のことで、将棋の千日手のような状態です。先程少し説明しましたが、このゲームでは場にでている色のキューブに符合する色のカードを両方のプレーヤーが出し合います。灰色と青色のキューブとカードがそれぞれ灰色5枚・5個と青色7枚・7個とあります。灰色と青色が他の3色より数が少ないのです。そこで、運も関係するのですが偶然に灰色が4個同じタイルの場にでてしまったとします。そうするとそのタイルの獲得条件を満たすには双方のプレーヤーが灰色のカードを計8枚出さなくてはなりません。しかし灰色のカードは5枚しかないので、そこのタイルは使えなくなり、灰色の勝利条件も最後まで達成出来なくなります。青色にも起こりうるので場合によっては勝利条件のトロフィー3つを獲得することが困難になるのです。これがいわゆる”ロックアップ”という現象です。確率はかなり低くなるのですが、他の色でも複数のタイルに同色のキューブが置かれた場合まれに起こりうる現象です。

まずステフェン・グレンさんが解決案を発表しました。それは、 (*注 1)

1)キューブをバッグから引き一つのタイルに配置するときに、灰色が3、4個または青色が4個同時にでた場合はキューブを引き直す。

2)上記措置を行っても”ロックアップ”状態になった場合はプレーヤーが故意に発生させた可能性が高いので引き分けとする。

という案でしたが、これはなんとすぐに撤回されました。それは”ロックアップ”の事例がドイツでも報告されていて、もっと良い解決案がWolfgang Luedtkeさん(カエサルとクレオパトラの作者)から発案されたからです。

Wolfgang Luedtkeさんの解決案: (*注 2)

1)すべてのタイルの上で各色のキューブは各色のトロフィー獲得条件から1を引いた数しか置いてはならない。もし引いてしまった場合は引き直す。つまり、灰色は2個、青色は3個、緑は4個、黄色は5個、赤色は6個まで場に引いて良い。それ以上引いた場合はキューブを引き直す。

   ステフェン・グレンさんはこの案が問題を解決するには一番覚えやすく簡単な方法であるとコメントしています。おそらく、将来的にはこの案が改訂されたマニュアルに記載されると思われます。こうして、このゲームにまつわる”バグ”が修正されたのです。

   この後もしばらくspielfrieksメーリングリストboardgamegeekのコメントでバルーンカップの問題について議論がなされました。まず”ロックアップ”についてなぜテストプレイでこの問題が見つけられなかったかが質問されました。ステフェン・グレンさんは自分のテストプレイとKosmos社のテストプレイでも一度も起きなかったと弁明しています。そのほかに第一ルール原理主義というのも現れました。これはステフェン・グレンさん自身もそうなのですが、最初に発表したルールが一番良くその他の追加修正ルールは無用という主張です。つまり”ロックアップ”した場合は引き分けで良いのではということです。これに対抗して、バルーンカップは”ブロークン”な(壊れた)ゲームだと主張する人たちも現れました。

   ぼくは、この問題が若干大きくなった背景に、バルーンカップのルールとメカニクスにエレガンスさがあったからだと思っています。このゲームは非常に簡単ではまる要素があり、非常にバランスが取れています。この一見パーフェクトに思えるゲームに”バグ”ともう一つ腑に落ちない要素があったから、プレーヤー達が過剰に反応したのではと思っています。これがもう少し複雑なルールであったら、少しのルールの穴は見過ごさるか、改訂によって修正されてあまり問題にはならなかったと思います。しかし、デザイナーとしてはかなりのショックだったと思います。このときの心境をspielfrieksメーリングリストでステフェン・グレンさんはこうコメントしています。
(*注 3)

SDJにノミネートされたときは夢のようだった。だけどこの”ロックアップ”問題ときたら、背中の後ろでたえず悪魔が”おまがすべてを駄目にした”とささやいてるみたいだ。

   僕はこのゲームを5回ほどプレイしたのですが、ロックアップはまだ経験していません。個人的には大変面白く悩ましい良く出来たゲームだと思います。3対1の交換についてもそんなに違和感は感じないので、たぶん好みの問題だと思います。僕もやはり余計な物が無い方があまり余分なルールを覚えたりしない分楽でいいなーと思っています。タイトルがバルーンカップの憂鬱というネガティブな感じのするところから始まっていますが、このゲームが決して悪いゲームというわけではありませんので、そこはご了承ください。

   この原稿はspielfrieksメーリングリストとboardgamegeekのコメントのやりとりをリサーチすることでのみ書いています。直接に取材を行ったわけでは無いということをご了承ください。詳しくはアメリカのyahoogroupsのspielfrieksメーリングリストのアーカイブを参照してください。検索で"balloon cup lock up"などで関連メールがリストアップ出来ます。

佐藤 朗 2003/08/05    

*注1) boardgamegeekコメント参照 ルール改定案1
*注2) boardgamegeekコメント参照 ルール改定案2
*注3) yahoogroups spielfrieksコメント参照 ステフェン・グレンさんのコメント


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