私は美術系の学校に行っていたのですが、授業の中で生徒同士が自分たちの作品を批評しあう機会が多々あります。批評の中であまり好ましくない言葉というのがありました。たとえばそれは"Cool"カッコイイであったり、"Beautiful"美しいであったり、ありきたりなコメントがいわゆる禁句になっていました。ありきたりなコメントはそこに意志や意見が介在しない場合が多く、ほとんどが反射的に出てくることばだからです。また、これらの言葉は一言で終わってしまう場合が多く、コメントがそれ以上膨らまないというのも問題でした。これはワインの味などにも言えると思うのですがTV番組なので"とってもフルーティーですね"とかコメントしてる場合がありますね。ワインは元々ブドウなんだし、フルーティーなのは当たり前だと思うのですがとりあえず決まり文句なんでしょうね。同じワインでもソムリエは味や全体の雰囲気を説明するときに"どぶネズミの血のような色"とかもっと綺麗に"赤く紅葉した落ち葉の香り"がしますとか、なんとなく訳のわかるよーな、わからないよーなコメントをしたりします。
さて、話は最初からボードゲームからそれまくっていますが、ボードゲームを形容するときにみなさんはどんな説明をしていますか?おそらく一番多いのが"おもしろい"だと思います。ゲームがおもしろいというのはもちろん一番良いほめ言葉だと思うのですが、前例からいうと"どうおもしろいか?"というのも重要ですよね。そこでちょっと英語圏のプレーヤーがボードゲームを形容するときに使う言葉というのをみてみました。その中で、あるボードゲーム群を形容するときに変わってるなーと感じた言葉がありましたので、紹介してみます。
"
Dry"ってなんだ?
" Dry"ドライ(乾いた)なゲームってどんなゲームなんだろう?とりあえず、Dryという言葉をボードゲーマーのメッカboardgamegeeksのgame
grossaryで見てみました。
Dry - adj. Overly mechanical or lacking
in thematic elements
ドライ - 形容詞 極端にメカニカルでテーマ性に欠ける。
なるほど、そういうゲームありますよね。作者で言うと、ライナー・クニツィア、ミハエル・シャハト、レオ・コロヴィーニのゲームにドライな物が多いですね。ライナー・クニツィアはゲームのメカニクスを先に考えてあとからテーマ性を付け足したり、テーマ性自体はメーカーにお任せになることもあるらしいので、ドライなゲームに仕上がるのも当然かもしれません。クニツィアの"ロストシティー"を初めて遊んだときにカバーやアートワークを見て凄く興奮した覚えがあるのですが、遊んでみると"失われた都を探検する"という設定はみごとに忘れられ、単純なトランプカードのゲームをしているという感じでした。ミハエル・シャハトの代表作"王と枢機卿"も12世紀のヨーロッパを巡って修道会や王家の覇権を巡り争うという設定なのですが、別に他の設定でも代用可能なぐらいにメカニクスの部分との一体感がありません。レオ・コロヴィーニにしても"カール大帝"や"カルタへナ"はメカニクス優先という感じをだしています。
こうして書くとドライなゲームはあまり良くない印象を受けるかも知れませんが、"ロストシティー"は二人用ゲームの傑作ですし、"王と枢機卿"と"カール大帝"は三人プレイのゲームとしては良く出来ていて、何回も遊びたくなるリプレイバリューの高い秀作だと思います。こうしたドライなゲームはテーマ性という要素が薄い分、よけいな要素が極力そぎ落とされています。そのためシンプルなゲームプレイを楽しめるのが特徴とも言えます。なにしろメカニクスとゲームプレイ感だけがそのゲームの存在価値になるわけですから、ゲームバランスやプレイ感が極力追求されていなければドライなボードゲームは成り立ちません。
ここですこし疑問が浮かびました。ドライなボードゲームが生まれてくる背景にはドイツ人気質や文化が関係するのか?ドイツボードゲーム全般としてアブストラクト寄りの物が多いとは言え、レオ・コロヴィーニをはじめシド・サクソンなどドイツ人以外のデザイナーからもドライなボードゲームが生まれています。ですから文化的背景を関連づけるには少々強引かもしれません。ライナー・クニツィアとレオ・コロヴィーニに関しては過去に銀行員だった経歴があるのでそれが左右しているのかもしれません。(*注1) クニツィア自身FunAgainのインタビューで自分はどちらかというと分析的な思考の持ち主だと述べています。(*注
2) この辺にドライなボードゲームが生まれてくる背景があると思われます。あとはマーケティングや販売戦略の問題で、ドライなゲームはどうしても一般受けはしにくい為、ファミリー向けなゲームはテーマ性を重視してドライなゲームはゲーマー向けというような棲み分けを作っていると考えられます。ドイツ人気質が多少影響していると思われるのはこうした棲み分けの中でドライなゲームが淘汰されずに根強く生き残っているあたりでしょう。なんと言っても質実剛健でシンプルにまとまっているドライなボードゲームというのは、日本人の考えるドイツ人気質そのものだと思います。
"ドライ"という一つの言葉からちょっと膨らましすぎたとは思いますが、ボードゲームを表現するときにこうした表現が沢山あった方がボードゲームをより理解する為に役立ち、またボードゲームを遊ぶというホビーとしての成熟度を上げることができるかもしれません。みなさんも遊ぶ際に、是非いろんな言葉を使ってボードゲームを表現してみてください。
*注1) Table Games in the World デザイナー紹介参照
*注2) FunAgain ライナー・クニツィアインタビュー参照
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